北朝鮮とコロナ、閉じ込められてしまった北朝鮮の人々(川崎栄子)

(YouTube「北朝鮮の極端的恐怖」2021年5月30日より)

皆さま、こんばんは。今日は北朝鮮とコロナについてお話をしてみたいと思います。

 

コロナという新しい病気が流行り始めて1年半が経ちました。でもまだ終息の目処が立ちません。目に見えない小さなウィルスというものが人類社会にどれだけ大きな影響を及ぼすかということについて、驚いています。

 

北朝鮮では、どうなっているのでしょうか?

 

コロナの流行が伝えられた時、金正恩はいち早く中朝国境を遮断しました。その後、陸・海・空すべてをシャットアウトしました。じゃあ、その中で北朝鮮の人々はどうしているのでしょうか?

■ 金正日が国民を切り捨てた「苦難の行軍」で500万人以上が餓死

1990年代後半にあった、金正日の頃の「苦難の行軍」は、金日成が生きている間にかろうじて持ち堪えていた配給制度ですが、金日成の死によって金正日が完全に切り捨てました。国民を切り捨ててしまったわけです。

 

数十年間、配給だけに頼って生きてきた人々はなす術を知りませんでした。本当にどんどん人が死んでいきました。国際的には300万人くらい死んだと言われていますが、北朝鮮内部に住んでいた私としては500万はくだらないと思います。

 

どうしてかと言いますと、党の幹部の方が私に言いました。「あまりにたくさんの人が死んで、党会議が構成できないんだ」と。会議というのは、その構成員の40〜50%以上が参加しないと構成できないものだと私は思っています。だからそれくらい人がたくさん死んだということです。

■ 生き延びる術は「チャンマダン経済」だったのに

そして今度、北朝鮮がまた「苦難の行軍」を始めると、宣言をしました。じゃあ、どうなるのでしょう?

 

以前は国境を遮断したりしませんでした。だからたくさんの人たちが飢え死にしていく中で、生き残った人たちは中朝国境を利用した密輸のルートを確保して、中国から密輸された色々な品物を国内で流通させることによって生き延びる道を見出しました。

 

いわゆるチャンマダン経済(闇市場)。資本主義経済の一つの未開なかたちですよね。そういうチャンマダン経済というものを作り出しました。そして今はそのチャンマダン経済さえ維持できれば、なんとか生きていけるのではないかという、そういう自信をもっていたと思います。

 

ところが金正恩が全面シャットアウトした状況の中で、今、北朝鮮の人たちはどうしているんでしょうか?私には想像もつきません。

■ 家族の安否さえ確認できない状況に夜も眠れない

私が北朝鮮の内部状況を本当に心から心配して、この頃、毎日、夜眠れません。どうしても暗くなると、飢餓の頃の地獄の様がフラッシュバックして寝ることができません。外が明るくなって初めて、少しウトウト眠りにつく状況が続いています。

 

それはどうしてか。もちろん私が北朝鮮の人権問題について活動しており、北緒戦の国民のことを色々と考えていることも確かです。でも直接的には私の家族の安否を知ることができないからです。

 

私には北朝鮮に四人の子供達とその配偶者、孫たち、合わせて12人の家族がいます。その彼らの安否を一昨年、コロナの流行が始まる少し前に、何とか今まで住んでいたところにみんな住んでいるという確認はとっています。それ以降、現在まで、いっさい確認が取れません。

■ 虚しく戻ってきたダンボール7箱

確認が取れないだけではありません。日本は北朝鮮との間で手紙のやり取りをすることができます。また北朝鮮側でお金を払わなければなりませんが、国際電話もかけることができます。そしてまた品物も送ることができます。こういう条件は韓国にいる脱北者よりは有利な条件ですよね。

 

そのために私も秋に、11月ごろ、越冬の準備をする頃には、ほんの雀の涙ほどではありますが、毎年、少しずつお金を送っていました。そして一年にいくつかずつ、一回にダンボール一箱、大きなダンボール一個に品物を色々と詰めますと、12〜15Kgくらいになるのですが、そういうのを一年に何回か送り出していました。

 

だから彼らは冬を越すための食料と燃料をなんとか少しずつでも購入し、着るものは日本から送ってやったもので着ていましたし、またそれが残ればチャンマダンに売れば食料と取り替えることもできるわけですよね。

 

それから薬品は、風邪薬や、胃腸薬や、そういう一般家庭で必要な薬品は送ってやっていました。そういう風にしてなんとかしのいでいたわけですよね。

 

ところがそれが全面シャットアウトされてしまって、今現在、お金も送ることができません。そして去年の7月ごろ、それまでにだいぶ長い時間をかけて送ったダンボールが、いっぺんにどさっと7個も戻ってきてしまいました。本当に涙も出ませんでした。

■ 21世紀の東アジアでどうしてこんなことが!?

そういう状況の中で彼らがどうしているのか、本当に心配でなりません。北朝鮮の人たちは今、檻の中に閉じ込められた状態にいるわけです。

 

金正恩はどういう魂胆で「苦難の行軍をまたやる」と?全国の一番末端単位が党の「細胞」と言います。党細胞秘書会議。一番末端単位の全国の人たち、数千人を集めた会議で宣言しました。

 

韓国の人たちは言っています。「一体、何人殺すつもりだろう。今度は1000万人くらい死ぬんじゃないだろうか?」

 

どうして21世紀の現代に、それも東アジアでこういうことが起こらなければならないのでしょうか。あり得ないことです。本当になんと表現して良いかわかりません。

■ 国際赤十字でも安否確認はできない。何の対策もできないのか?

私はこういう状況の中で、なんとか私の子ども達・孫たちが生き延びてくれることを願うしか方法がないわけです。

 

コロナ流行の時ではありませんが、一昨年くらいだったか、家族の安否のために、国際赤十字に安否確認をお願いしたことがありました。その時、国際赤十字からはどういう返事が来たか。

 

「私たちは平壌にオフィスを持っております。色々な援助品とか医療品とか、そういう物を送り込むために持っております。でもあなたがおっしゃるような、そういう確認とかはすることができません。そういうことを持ち出したが最後、北朝鮮から私たちのオフィスが追い出されてしまうからです」。そう言って断られました。私は本当にぐうの音も出ないで帰ってきました。

 

なんとか対策を立てる方法はないものでしょうか。皆さん、一緒に考えてみてください。

 

今日は、北朝鮮のコロナの状況という内容で、私ごとをたくさんお話ししましたが、これくらいにさせていただきます。