新潟港中央埠頭にて追慕式を行いました。(2023年12月14日)

北朝鮮”北送・帰還・帰国”事業64周年 新潟港中央埠頭追慕式

2023年12月14日(木)、この日は64年前(1959年)に新潟港中央埠頭から第一次北送船が出航した日です。新ボトナム会では、北送事業で北朝鮮に渡り犠牲になった(なっている)方々を偲び、今年も追慕式を行いました。

 

昨年は嵐の中で行われましたが、今年は好天に恵まれ、プログラム内容を変更することなく行うことができました。


◯ 追慕の辞 川崎栄子氏(新ボトナム会代表/NGOモドゥモイジャ代表/AKU Japan代表理事)


去年まではこの新潟港に来ると、献花の時に号泣していましたが、今年は泣きません。私たちはこの北送事業が嘘の事業であったかどうかを争う裁判で完全な勝利を獲得しました。

 

北朝鮮「北送・帰還・帰国」事業は、北朝鮮は「地上の楽園」だと宣伝し、朝鮮学校の高校生まで動員して、在日コリアンの方々が動かざるを得ないような雰囲気を作り上げて行われ、93,340名もの人々が犠牲になりました。

 

そして北朝鮮の国民の中には外国に労働に行ったりする人がいたとしても、在日帰国者は北朝鮮から一歩も外に出ることができない、「監禁」されたような状態でした。そんな中で精神に異常をきたす人や自殺する人が多く出ました。病気で亡くなった人、発言を間違えて殺された人、強制収容所に送られた人、山奥に追放された人など、多くの犠牲者が出ました。

 

それに加え、極端な経済的貧困です。私ほど休みなく働いた人はいないと思うほどですが、それでも色々な名目で給料を引かれたらマイナスになってしまって一銭も残らず、食べることができない時がありました。

 

私自身も自殺を考えたりもしましたが、家族が北朝鮮に来るのを止めなければなりませんでしたし、自殺者に対する北朝鮮での扱いの酷さに思いとどまり、「三ザル」を決め込んで生き延びました。

 

60歳を過ぎ、北朝鮮では老人と見なされるようになってから、このまま死ぬのではなく、この国の惨状をなんとか世界に知らせなければならないと思い、脱北することにしました。私が脱北しようとしていることを察した息子は、切り出せずにいた私に対して、その事の責めは自分が受けるのでこれからは日本の両親に孝行してくださいと、背中を押してくれました。私は涙がボロボロ出ました。

 

日本に来てから本を出版するなどしましたが、私にしかできない活動をするために独立してモドゥモイジャを設立しました。ただ言葉で北朝鮮の状況を伝えるだけでなく、法律に訴えて戦うことにしました。最初は周囲の方々から「時間の無駄」になると反対をされましたが、5年前から開始し、10月30日、私たちが望んだ以上の全面勝訴でした。

 

北送事業の「地上の楽園」キャンペーンは嘘の事業であり、原告に対して一人一億円の賠償を支払えというだけでなく、それとは別に、私が現在も家族と会うことができなくなっている、これも大変な人権問題だという判決でした。

 

今日はそのように、私たちの活動が実を結んでいますという成果を報告することになりましたので、涙を流さなくても良いと思います。

◯ 追慕の辞 ユ・ジョンスク氏(大邱脱北民ハンマウム 会長)

新潟の行事に初めて参加して、私たちだけが被害者でなく、日本にもこれほど多くの北朝鮮による人権被害者がいると知りました。

 

長女を亡くした私の体験を人前で話すのがあまり好きではありませんでしたが、私より悲しい人が多くいることを知り、これからは話さなければならないと思っています。

 

私たちの悲しみを土台に、一人ではなく、今後は力を合わせて北朝鮮人権問題を解決していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。

 

ありがとうございました。

◯ 追慕の辞 エレオノール・フェルナンデス氏(ソウル国連人権高等弁務官事務所 人権官)

(以下はメッセージの要約)

東京高裁における前向きな結果を歓迎します。

 

私たちは日本の脱北者からの聞き取り調査を行い、彼らが(地上の楽園という)偽りの約束によって北朝鮮に渡り、騙されたことにショックを受けたという証拠を補強することができました。

 

国連では北朝鮮に対し、強制失踪の事実を認め、被害者を解放するように求めています。北朝鮮は被害者と家族に包括的な補償を提供するべきです。

 

私たちは北朝鮮による強制失踪を検証し報告書『この傷は癒えない』(2023年3月)を発表しました。今後も聞き取り調査を続けていきます。

 

北朝鮮人権問題を扱う市民団体に感謝します。私たちの共通目的は北朝鮮の人権状況を改善し、説明責任を果たさせることです。説明責任が果たされることにより、国際犯罪の責任者の捜査と訴追がなされ、被害者救済のための司法的な手続きが行われます。

 

世界人権宣言採択から75周年。本日、私たちは北朝鮮の人権状況と「地上の楽園」キャンペーンを取り上げ、平等、正義、自由のために集まりました。このことは平和を維持するために、大きな意味を持つでしょう。ありがとうございました。

◯ 黙祷

家族の幸せを思い、自由を求めて渡った北朝鮮で全てを失い、無念の思いを残して逝かざるを得なかった魂が鎮まるように。

 

また、ある日突然、拉致され、金氏独裁体制下の北朝鮮で生きざるを得なかった魂が鎮まるように。

 

そして「ボトナム通り」リニューアルプロジェクトを通して新潟が多くの人が自由と人権を学ぶことができる場へと生まれ変わることへの願い。

 

様々な想いを込め、一分間の黙祷を心静かに捧げました。

◯ 献花

川崎栄子代表
川崎栄子代表
左からカン・ボンスンさん、ユ・ジョンスクさん、李ソラさん(共に脱北者)
左からカン・ボンスンさん、ユ・ジョンスクさん、李ソラさん(共に脱北者)

◯ 追慕の歌 山口采希さん


シンガー・ソングライターの山口采希(あやき)さんは、北朝鮮による「強制失踪」によって囚われている方々を思い作曲した「空と海の向こう」と、「ふるさと」で追慕の思いを捧げました。

 

「ふるさと」は川崎代表も一緒に歌い、北朝鮮に囚われながら日本への帰国を願う方々へ想いを捧げ、参加者も共に歌いました。

 

最後に横田めぐみさんが中学一年の合唱コンクールで歌った「翼をください」を山口さんのリードで、全員で歌いました。

◯ 北朝鮮”北送・帰還・帰国”事業65周年 国際行事発足宣言(川崎栄子氏)

今年は私たちの活動が裁判において大きな成果を上げることができました。

 

来年(2024年)は、北朝鮮「北送・帰還・帰国」事業65周年の節目となります。

 

この行事を日本と韓国だけではなく国際行事として行うことで、より多くの方々に知っていただき、広げていきたいと考えておりますので、北朝鮮「北送・帰還・帰国」事業65周年国際行事の宣言をいたします。

 

よろしくお願いいたします。

◯ 川崎栄子さんが代表して菊の花を北朝鮮に向けて捧げる

「北朝鮮におられる皆さま。皆さんが飛行機でも船に乗ってでも、堂々とこの新潟に帰ってこられるように、それを私たちが実現しますから、待っていてください。

 

今は菊の花を捧げることしかできませんが、晴れて帰っていらっしゃった時には、大きなバラの花を捧げます。」